第14章 衝動(R18:花巻貴大)
「お花巻ー! スポドリー!」
「だから自分で取ってきてくださいて」
「無理! 俺もう一歩も動けねェ!」
ったくワガママな上司である。
俺を新しい世界へと誘ってくれた彼、タタさんは、ピンクレンジャーの衣装を着たまま楽屋でブッ倒れていた。
頭部を覆っているマスクだけ外しているから、だいぶ妙な光景だ。
首から下は、ナイスバディ。
首から上は、おっさん。
もはやただのホラーである。
「今度とっておきのAV貸すから!」
「……駅地下の限定プリンも?」
「わーったよ! プリンでもボインでも何でも買ってやるから、早く冷やしタオルとスポドリ取ってこい!」
「うーす、毎度ありー」
面倒くさい系上司の扱いにもかなり慣れてきた今日この頃。
本日一発目のショーを終えたばかりの俺は、クソがつくほど疲れた身体を引きずって、楽屋を後にした。
目指すは駐車場。
スーツアクターズ事務所の専用車だ。
トランクには大量の保冷剤と、スポーツドリンク、それからキンキンに凍らせたタオルが用意されている。