第14章 衝動(R18:花巻貴大)
『は? ヒー、ロー……?』
『おーよ! ヒーローだ!』
ただ時間を貪るだけの毎日を過ごしていた俺にとって、突如として降りかかったそれは紛れもなく、非日常だった。
たまたま飯を食いにきていたタタさんは、たまたま授業を抜けて賭けトランプに興じていた俺を、たまたま見つけて恋に落ちたらしい。
言っとくが俺にじゃない。
俺の、この身体にだ。
いや変な意味ではなくて。
『ん、やー……俺ヒーローとかやるようなタイプじゃないんで、そういうのはちょっと』
自嘲じみた半笑いを浮かべて断ろうとした俺にドロップキックをして、タタさんは笑った。
俺より20センチも小さな身体で、懸命に俺を追っかけ回して、笑っていた。
『馬鹿かお前! タイプかそうじゃねえかなんて、んなモンやってみなきゃ分かんねーだろうが!』
『だが敢えて言おう!』
『お前はヒーローに向いていると! このタタさんが保証してやらァ!』
その笑顔の、楽しそうなこと。
マジで変なひとだと思った。
厄介な先輩に捕まっちまったなあ、と思った。
だけど。
すげえ心揺らいだ。
すげえ心惹かれた。
このひとに付いていけばどこか、こんな怠惰な日常じゃないどこか、新しい世界に行けるんじゃねえかって。
そう、──思ったんだ。