第13章 夜陰(R18:カレカノ理論Ⅱ)
「絢香! 何、どした!?」
交差点の周囲にいる群衆が私たちに視線を注いでいた。車も、人も、すべてが通行を止めてこちらを見ていた。
騒然とするスクランブル交差点。
駅前広場側にはハジメが。
センター街側には光太郎が。
そして彼らの間には、私が──
え、何々?
映画の撮影とか?
やだ、あの子泣いてる。
うわー修羅場じゃん。
ざわめき。
どよめき。
波紋のように広がっていく。
「絢香、大丈夫か!?」
救いあげられる意識。
震える肩に、彼の熱。
視線を上げればそこには甘やかなゴールドが、俗にいうヤンキー座りをして私を覗きこんでいた。
ああ、光太郎だ。
来てくれた。
本当に、光太郎だ。
「っ会いたか、った……!」
私は人目もはばからずに顔をくしゃくしゃにして、光太郎の腕に縋りついた。
先頭車両から三台目。
高架下方面の車道に見慣れた純白のサバーバンを見つけて、心から安堵する。
でも、それは、──ほんの寸刻の安堵でしかなくて。