第13章 夜陰(R18:カレカノ理論Ⅱ)
ヴー……ッ
ヴー……ッ
ホットパンツの後ろポケットが震動したのは、京治くんが本日のラストソングを歌いはじめた時のことだった。
着信を伝えるスマホ。
黒いロック画面に、彼の文字。
着信中
【岩泉 一】
心臓が大きく、拍動した。
あの日。
光太郎と出会った日。
ハジメと見知らぬ女の浮気現場を目撃してしまった私は、一方的に連絡を絶っていた。
何通メールが来ても。
何度着信があっても。
すべて無視していた。
見て見ぬフリをしていた。
ハジメと、一度は結婚を約束した相手と、面と向かって話す勇気がなかった。傷つくのが怖かった。
あの日から、今日で二ヶ月。
もうほとんど連絡が来ることもなくなっていたのに、どうして今更──
「……ああ、そっか」
今日は記念日、だったはずの。
友人の紹介で知り合った私たちが出会って、恋をして、付き合ってから、三年目の。
入籍をするはずだった日、だ。