• テキストサイズ

(R18) 行かないで青春 (HQ)

第13章 夜陰(R18:カレカノ理論Ⅱ)




 *


 深夜一時を過ぎた頃。

 光太郎は「ちょっと仕事してくる」と言ってクラブを後にした。送迎ドライバーのひとりがスピード違反で捕まってしまい、人手が足りなくなってしまったらしいのだ。

 彼の仕事は、デリバリーヘルスに勤める女の子たちの送迎である。

 それは私に出会う前からしていた仕事なワケだし、彼のプライベートは尊重したい。したいのだけれど。


「(私、すごく不安だよ、光太郎)」

「……何か用ですか黒尾さん」

「いやお前の胸中の代弁をな、こう」


 突然後ろから声がしたと思ったら、その正体は黒尾さんの裏声だった。

 いい感じに酔っている彼。
 黒尾さんは絡み上戸なのだ。

 要するに酔うと非常に面倒くさい。


「(マイダーリン光太郎がどこぞのデリヘル嬢に寝取られたらどーしよー!)」

「……内容に異議はありませんけどね」

「(早く帰ってきてスイートハニー)」

「その妙な横文字はやめてください」


 テキーラの匂いがする黒尾さんに肩を抱かれて、適当にあしらう深夜一時。

 ステージにはピンスポット。
 暗闇にぽっかりと空いた丸のなかで、京治くんがその美声を響かせている。

 相変わらず聴かせる歌声。

 いたるところで涙ぐむ女性たちは、皆一様に「KG a.k.a ICE PRINCE」という文字が印刷されたファングッズを身につけていた。


 京治、またの名を、氷の王子。


 それが京治くんの愛称なんだそうだ。なんでも勝手に設立されたファンクラブが勝手に名付けたらしく、本人はすごく嫌がっているらしい。

 このお話を嬉々として教えてくれたのは、京治くんのグッズ販売を手掛ける黒尾さんである。守銭奴め。

/ 454ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp