第13章 夜陰(R18:カレカノ理論Ⅱ)
数日振りに見る彼は、白無地のTシャツにブラックジーンズという出立ちだった。スニーカーは純白のハイカット。
車といい服といい、光太郎は白をよく好む。彼はスマホカバーも白いクロコダイル柄だ。
今日の服装はすごくシンプル、なのに、あの髪色とゴツいアクセサリーのせいで派手にしか見えなかった。
ていうかすごく怖い。
ただの不良である。
自分の恋人なのが嘘みたいだ。
「絢香、お前、何そのカッコ!?」
彼は人だかりのなかに自然とできた道を──光太郎の外見と大声にビックリした客たちが避けただけだが、一直線にこちらへ向かって進んでくる。
ガシッと掴まれた両肩。
そのあまりの握力に走る痛み。
光太郎、もしかして怒ってる?
「……え、っと、これは」
考えてみればそうだよね。
自分の了解も取らずに彼女がこんな恰好してたら誰だって怒る。光太郎が怒るのも当然だ。
「……ごめんなさ、」
私は素直に謝ろうとした。
しかし、それは叶わなかった。
ぺこりと下げようとした頭。
黒尾さんに命令されてセットした巻髪を、光太郎の逞しい腕が包みこむ。
ふわ、いい香り。
甘ったるい匂い。
光太郎の車に置いてある芳香剤だ。
彼の衣服にも香りが移っているから、光太郎に近づくと必ずこの匂いがするんだけど、要するに。
「──……光、太郎?」
私は、抱き締められていた。
ダンスフロアのど真ん中で。たくさんの人が見ている前で。ただでさえ目立つ光太郎に、ぎゅうっ、ときつく抱き締められている。