第12章 雪白(R18:菅原孝支)
どうして笑うの。
どうして、怒らないの。
「俺は入っちゃ駄目なんだもんな」
旭は良くて。
俺は、駄目。
どうしてそんなに悲しそうな顔で笑うの。どうしてこんな時まで笑顔でいようとするの。
「んーと……絢香が話したくないならいいけどさ、気が向いたら話してほしい。俺いつでも相談乗るし、な?」
彼は言う。
朗らかに、まるで春の陽だまりのように微笑んで。
ごめんな。
もっと早く声掛けてやれなくて。
彼は何も悪くないのに、それでもこころの底から自分が悪いと思っているみたいに、笑うんだ。
悲しそうな笑顔で。
「…………て、ください」
「──……え?」
もう限界だ。
そう、思った。
これ以上彼を苦しめちゃいけない。これ以上彼を傷つけたくない。言わなければ。本当のことを。すべて洗いざらい打ち明けて、それで──
「私と、別れてください」
終わりにしなければいけない。