第12章 雪白(R18:菅原孝支)
バター、って何種類あんのこれ。
乳製品売場でこれでもかと首をひねる。雪の印がついたやつ。よつ葉が印刷されたやつ。高級ホテルのやつ。
こっちの旨そうな食パンが描いてあるやつはマーガリンだから除外。んじゃこっちのは、ええと、バターのようなマーガリン?
「……はあ?」
もう謎々レベルだった。
バターのようでバターじゃない。でもバターの味がするマーガリン。マーガリンなのにバター味。さてこれなーんだ。
「解るか! 解んねえわ!」
ひんやりした冷気が流れてくる陳列棚。お行儀よく並んだバターやバターもどきの前で、ひとり、渾身のツッコミをいれる。どれを買えばいいんだ全く。
あ、そうだ、あの人に聞こう。
いいこと思い付いたとばかりにポン、と手を打って、俺は普段からお世話になっている艶々の黒髪がサラッサラの先輩を探した。
「あ、」
「ん?」
「おお!」
三者三様の第一声。
艶サラの先輩、こと、嶋田さんを捜すために顔を出したレジ前。そこで遭遇したのは見慣れた二人。
カゴいっぱいに野菜やら肉やらを詰めた大地と、カゴいっぱいに小麦粉やらチョコレートやらを詰めた旭だった。