第12章 雪白(R18:菅原孝支)
「お父さんお母さん、絢香をこの世に生んでくれてありがとうございますっ!」
これ、俺の恒例行事。
ちなみにご両親は健在だ。
しかもラブラブだ。お父さんの海外出張にお母さんが付いていっちゃうくらい、ラブラブだ。
『それ、親がもうこの世にいないみたいだから、やめて』
彼女は以前驚くほど冷たい声でそう言ってたけど、でも俺はやめない。だって感謝したい。
絢香のお父さんとお母さん。
彼らがいるから、絢香がいる。
彼らが愛を交わしてくれたから絢香がいて、彼らが大事に大事に育ててくれたから、俺は高校生になった絢香と出会えたんだ。
これ以上の感謝ってない。
じゃあ、伝えなきゃ、だべ?
「こーしくん! 時間!」
「わ、ごめん! 行ってくる!」
気をつけて急いでね。
いってらっしゃい。
ちょっと不貞腐れた絢香の声を背中で受けとめて、もっかい一礼。ご両親の写真に笑顔を向けてから、俺はスーパーへと駆けだした。