第12章 雪白(R18:菅原孝支)
だいぶ慣れてきた彼女宅。
カモミールがふわり香る玄関でスニーカーを突っかけて、とんとん、爪先を二回鳴らす。
初めて来たときはド緊張して、ご両親への挨拶を噛みまくったんだっけか。懐かしいなあ。
『はっ、初めましてすぎゃっ……菅原こぶっ……孝支です! 娘さんを僕にください!』
あのときの凍りついた空気。
終わったと思ったね実際。
なんでプロポーズしたの俺、って。
まあ、直後に絢香も親御さんも爆笑してくれて、おかげで打ち解けることができたんだけど。
だああ、顔が熱い!
思いだし笑い、ならぬ、思いだし恥ずかしで腹がムズムズして仕方ない。彼女ん家の玄関でなにを悶絶してんだ俺は。
解けかかっていたスニーカーの紐を結びなおして、さて出発。
靴箱のうえで微笑むご両親の写真に一礼して、俺は顔面いっぱいに笑顔をつくった。