第11章 灼熱(R18:牛島若利)
どうすればいい。
俺は、どうすれば。
どんな言葉を掛ければ絢香は笑ってくれる。何をすれば絢香は心安らげる。俺はあなたの為に、何が出来るのだろう。
なんて、──俺は無力なのだろう。
「……汚くなんかない」
せめて。
どうか。
俺はそんな風に思ってなんかいないという事実を、伝えたくて、解ってほしくて。
「汚ないなんて、言うな」
そっと触れる赤痣。
あなたが大事だと言ってくれた、この左手で、あの男の跡を隠すように撫でていく。
泣いたまま俺を見つめる彼女に視線を返して、ほんの少しだけ、口元で笑みをつくってみた。
「絢香、あなたは美しい」
誰よりも。
何よりも。
「──だから泣かないで」
そう言うのと同時に、彼女の脚に手を掛けた。膝裏と足首を持ち上げるようにして、自分の唇に引き寄せる。
百合茎のような脛。
咲いた牡丹のような膝。
下から順に口付けを落としていく。その先に待つ、芍薬の蜜を目指して。
「……っあ、ん……若利、く」
秘所への道すがら。
通りがけに落ちていた赤痣に噛みつくと、彼女は腰を反らせて甘く泣いた。
あの男の軌跡を消して。
情念と、愛で、焼き切って。
お前がいくら夫を名乗ろうとも、彼女は永遠に俺のモノなのだと──
「愛してる、絢香」
愛の証を刻みつける。