第11章 灼熱(R18:牛島若利)
俺を捕らえていた彼女の手を掴んで、今度は逆にこちらへと引き寄せる。
少し強引になってしまった気もするが、そんなことに構っている余裕なんて、どこにも残っていなかった。
抱き寄せて。
抱き締めて。
腕のなかに収めた彼女の項に、そっと指を滑らせる。
(──……好きだ)
ほろりと言葉を落とせば、私も、と。
小さな吐息が返ってくる。鼓動がひとつになる。徐々に早くなっていく脈拍さえ愛おしい。
好きだ。
ずっと好きだった。
積もり積もった想いがブレーキを失って、溢れだす。もう止めることなんて出来ない。そのつもりもない。
(今夜だけでいい)
彼女の唇に自分のそれを寄せて、触れさせて、直接愛を注ぎ込んでいく。
今夜だけ、たった一夜だけ。
朝日が昇るまでの数時間でいい。
だから──
(俺のモノになれ、絢香)
月夜の晩。
最初で最後の今宵。
何も知らずに下卑た通話を続けていたあの男は、やはり何も知らぬまま闇のなかへと消え去った。
(……抱いて、若利くん)
(あなたのモノにして)
(一生忘れられない記憶を頂戴)
雪見障子の閉じられた茶室で二人、囁くのは恋心。想いが通じた俺たちにはもう、迷いなんて、──ない。