第11章 灼熱(R18:牛島若利)
勘弁してくれ。
彼女が和装肌着を広げた瞬間、俺は目眩すら感じた。下着一枚になれというのか。今ここで。あなたの目の前で。
「せめて長襦袢からに」
してもらえないか。
そう頼もうとしたのだが、彼女にシャツのボタンを捕らえられて閉口する。白鳥沢の校章が縫いとられた襟元に、少し冷えた指先が触れた。
落ちついた色合いの爪。
夏空のように澄んだ、青。
「若利くん、いくつになったん?」
「……昨日で十七に」
「昨日? あっ! 昨日、誕生日、嫌やわ私ったらうっかりして……!」
彼女はひとしきり焦って、謝って、それから埋め合わせをさせてくれと言った。
俺はとくに断りもせず頷く。
誕生祝いなんてどうでもいいから、早くこの現状をどうにかして欲しいのだ。
前を肌蹴させられた制服。
抜きとられたベルト。
決して広くはない化粧部屋に、俺と彼女、たった二人きり。劣情を催すなという方がどうかしてる。
「……絢香姉さん」
「ああもう、私の阿呆! 大事な大事な若利くんのお誕生日忘れるなんて……ほんま御免なあ、堪忍して?」
「姉さん」
「何でもおねだりしてな? 姉ちゃん奮発してお給金はたく勢いでお祝いを」
「おい、絢香」
痺れを切らして名だけを呼ぶと、彼女はびっくりしたような顔で俺を見た。
見て、そのまま、まだ見ている。
口が開いたまま塞がらないらしい。
「着物」
「へっ?」
「着させてくれるんじゃないのか」
「っあ! そやね!」
すっかり忘れとった!
言いながら慌てて肌着を手にした彼女は、彼女の頬は、ほのりと赤らんでいるように見えた。