第10章 爪先にルージュを塗って (R18:赤葦京治)
「何もこんな風にしなくても」
目隠しのスカーフが解かれて、目元を赤く腫らした先輩をみて、私は不機嫌に唇を尖らせる。
あれほど愛すると言ったのに。
信用してもらえてないのだろうか。
視線を下げるとそこには、パールのロングネックレスで拘束された私の両手首があった。
「逃げたりしませんよ、私」
これ見よがしに腕を掲げると、シャラリ、真珠の手錠が軽やかな音を立てる。
「ああ、違うよ」
「…………?」
「それはただの趣味」
縛られた女の子見るの好きなんだ、俺。先輩はサラッと暴露した。
これは、あれか。
開き直ると強いタイプか。
いや、元々結構図太い男性(ひと)だとは思っていたけれども。
「あー……それはまた殊勝な」
「縛られるのも好きだよ」
「変態ですか、変態ですね」
「あはは、そうだね」
朗らかに笑んでから、京治先輩はおもむろに片膝をついた。対面する私はアンティーク調の椅子に座らされている。
そっと私の足に触れる先輩。
まだ履いたままだった紺ハイが、するると脱がされていく。
なんだっけ、これ。
何かに似てるんだけど。
ああ、そうか。
「……この靴、絢香にピッタリだね」
シンデレラだ。