第9章 カレとカノジョの相対性理論 (R18:木兎光太郎)
私のブラウスのボタンを、彼がひとつひとつ外していく。
寛げられていく首筋、鎖骨、胸元。
そのすべてに木兎さんはキスをして、歯を立てて、甘い刺激を残していった。
「っ、ぁ、木兎、さん」
彼の名前を呼ぶと、整ったその唇がふわりと下弦の月を描く。また笑った。
今度は、愛おしげな笑み。
「絢香、震えてる、怖い?」
キスを下ろしていく最中、お腹の柔らかいところに優しく口付けをして、彼は問うた。
そっと、頬に触れる熱。
木兎さんの手の甲だ。シルバーアクセサリーの冷たい感触。男らしく骨張った指。
私はふるふると首を振って答えた。大丈夫の合図。やめてほしくない。きもちいい。
でも──
「大丈夫、ヤリ捨てとかしねえから」
「……! ど、して、分かったの」
「俺ね、こう見えて紳士なの、どう?」
惚れちゃった?
そう言いながら片方の口角だけをあげてみせて、彼は笑った。ふふん。得意げな笑み。
またひとつ。
彼の笑顔が増えていく。