第1章 キミは宇宙の音がする (R18:灰羽リエーフ)
「…………の?」
「ん、なに?」
「本当に、いいの?」
上擦った声で問えば、返されるのは可愛らしい口付け。色味の薄い唇が、チュ、とおでこに触れるだけのキスをする。
「ウィーンなんて全然近いよ」
俺、ウィーンがどこなのかちょっと分かんないスけどね!
そう言って彼は笑った。
天真爛漫で、温かな、私のもっとも愛した笑顔だった。ばかね。ウィーンはオーストリアよ。そんなセリフが浮かんだけど、それは言わないでおいた。
言うべきなのは、こっちだしね。
「好き。リエーフ、大好き」
「へへ、俺も好き! 大好きデス!」
ようやく繋がった想い。
堰を切ったように溢れだす「好き」は止めどなく、幾度とキスを交わす私たちを月光が優しく照らす。
幸せに満ちた音楽室にリエーフの「と、いうワケで」が響いたのは、この直後のお話だった。