第8章 おやつにバナナを含ませたい (R18:岩泉一)
「お待たせー! 待った?」
ねえ待った?
意味不明なテンションで問いかけてくるバカ、こと、及川はその腕いっぱいに飲物を抱えていた。
炭酸ジュース。
オレンジ。
コーヒー微糖。
それから、カフェオレ。
迷わず俺に炭酸を投げて寄越して、花巻にオレンジジュース、松川にコーヒーを渡す。
そこでようやく一本足りないことに気付いた及川は「あ、つい普段のクセで」と前置きをしてから、瀬野にカフェオレを渡した。
ミルクたっぷりのそれ。
及川が、一番好きなやつ。
「ごめんね、これでいい?」
「えっ、うん、……でも、」
「気にしなくていいよ。俺そんなに喉渇いてないし、あ、じゃあ及川さんと半分こする?」
なんつって☆
そうおどけてみせて、及川は得意のウィンクをした。舌先をペロ、と出すあのふざけた顔だ。
「……っぷ、もう、やだあ」
俺の反対側に腰かけた及川。
瀬野を挟むようにして座っているせいで、今、彼女がどんな顔して笑っているのか俺からは見えない。
チクン
あ、れ?
胸のあたりに妙な違和感を覚えて、俺は首を傾げた。チク。チク。なんだこれ。
心臓が、痛え。