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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第8章  おやつにバナナを含ませたい (R18:岩泉一)




 *


 世界がガラリと変わった気がした。

 ただの同級生としか思っていなかった瀬野が、まるで別人のように見えた。

 及川たちに一枚噛まれたのが悔しいけど、例のなんとか大作戦ってのは、まあ成功したらしい。


「残さず食えよー」

「コラ! 6組男子!」

「静かになさい!」


 修学旅行一日目の夜。

 各クラスごとに腰かけた俺たちは、風土色豊かな沖縄料理に舌鼓を打っていた。夕飯の時間である。

 やんやと教師に叱られる6組。
 隣のクラスだが、説教を食らってる中心にはやはり及川(やつ)がいた。本当バカだなあいつ。

 ふと、反対側に目を向ける。

 でかい宴会場の壁際。
 出席番号順で並ばされた1組の列に視線を走らせて、瀬野の姿を見つけた。

 俺は5組だから、ここからだと少し遠い。

 楽しげに食事をする笑顔を眺めて、笑うと可愛いんだな、なんて柄にもないことを考える。

 そんなとき、だった。


「岩ちゃあーーん」


 例によってクソ川である。

 奴は6組の【お】
 俺は5組の【い】

 要するに席が近え。すごく近え。生徒数人を挟んだ距離にいる及川を睨むと、奴は唇だけを動かして口パクをしてみせる。


(見・す・ぎ☆)


 ちなみにウィンクのおまけ付き。
 鳥肌が立った。殺意が湧いた。

 これ以上あのバカに付き合うと、全生徒の前で【クソ川ボゲェ!】を晒すことになるので、俺はそっぽを向いて食事を再開した。

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