第8章 おやつにバナナを含ませたい (R18:岩泉一)
「本当にごめんなさいいっ……!」
自由時間も残すところ60分。
絢香とチームメイト三人の【計画】を知った岩泉は、とりあえず男全員を砂浜に正座させていた。
その異様な光景をみた女子生徒──松川を席替えに呼び出したとされる美人だが──彼女が慌てて絢香を呼びよせ、今に至る。
絢香は地におでこを打ちつけん勢いで腰を折り、飛行機での一件を岩泉に謝罪していた。
「いや、別に怒ってねえけどよ」
絢香を庇うようにして立っていた美人が、ほっ、と安堵したような顔をする。
彼女もまた、この計画、鈍感な岩ちゃんに絢香ちゃんを意識させよう大作戦(命名:及川)の協力者だ。
かねてより絢香の相談相手として話を聞いていた松川が、おもむろに立ち上がって足についた砂を払った。
「だってさ、よかったな絢香」
その言葉が鶴のひと声となって、及川と花巻がドッとため息を吐く。
「んもー! 足痺れた!」
「砂熱っ、火傷するわマジで」
「ていうか、そもそも岩ちゃんが鈍感すぎるのが悪いんじゃんか!」
腕組みして仁王立ちする岩泉。
いまだ頭を下げつづける絢香。
両者を交互にみて、及川がぷう、と両頬を膨らませた。岩泉渾身のグーパンを食らったせいで、彼の頭頂部はまだジンジンと痛みを訴えている。