第7章 少年期の終わりは時として (R18:日向翔陽)
「絢香ちゃん可哀想!」
「……え?」
「辛いじゃん、不倫なんて」
一体何が起こっているというのか。
つい先ほどまで妖しげな笑みを携えていたはずの彼は、一転して、普段の人懐こそうな声音で話をつづける。
「悲しいことも多いでしょ?」
こてん、可愛らしく首を傾げる仕草。
「たくさん泣いてるよね?」
こてん、今度は反対へ傾げてみせる。
「──……知ってるんだあ、おれ」
ピピピッ
ピピピッ
突然鳴りだした着信音。
ビクリとして音の根源を探す。
私のスマホ。
スウェットのなか。
ポケットが、右脚が、震えてる。
「…………?」
恐る恐るスマホを取りだして、液晶にカチカチと当たってしまう指先とネイルを抑えつけて、ロックを外す。
【メールが届いています】
画面上部に表示された、通知。
無機質なそのウィンドウをタップして受信箱を開くと、映しだされたのは彼からの受信通知だった。
●翔ちゃん 21:46
件名なし
添付ファイル:image1.JPG
件名も、本文もない。
一枚の写メが添付されているだけ。
本能が今すぐに逃げろと警鐘を鳴らすのに、動揺と不安でパニックになった脳が、思考回路が、身体が、言うことをきいてくれない。
彼に操られるマリオネットのごとく、自分の意思とは関係なしにメールを開く。