第7章 少年期の終わりは時として (R18:日向翔陽)
私には、その光景が。
足を組んで私のベッドに腰かける翔ちゃんの冷笑が、事実なのか、虚構なのか。
理解することができなかった。
「遅かったね」
く、と少しだけ首を傾げる彼。
その視線は刃物のように鋭く、深く、私の両眼に突きたてられている。恐ろしいくらい伝わってくる。彼の恐赫。
目を逸らしたら、許さない。
声に出さずしてそう釘をさす彼は、淡々と、それでいて面白おかしそうに言葉を吐きだしていく。
「さっきの続きだけどさあ」
「……?」
「絢香ちゃんって、不倫してるでしょ」
「!」
どうして、それを。
驚愕のあまり目が口ほどに胸中を語ってしまう。しまった。これじゃまるでイエスと答えているようなものだ。
「図星かあ、……ふうん」
私の顔色をみて確信を得たのか、それとも、最初からすべてを知っているのか。
それは彼のみぞ知るところなのだが、しかし私はこのあと、思い知らされることになる。
無垢と、邪悪は、表裏一体であるということを。