第7章 少年期の終わりは時として (R18:日向翔陽)
轟々と屋根を鳴らす雨粒。
ひどい雨が、降っている。
狂ったように荒ぶる風のせいで外壁は揺れ、窓に叩きつけられる葉や小枝がくぐもったラップ音を響かせていた。
タタッ バタタッ
耳にこびりつくような雨音に混ざって、雷鳴が低く轟いている。
青白い閃光とゴロゴロという音の感覚は、もう幾ばくもない。雷雲が、すぐそこにまで迫っているのだ。
「あらやだあ! きよしが出てる!」
「え、きよし? どこどこ?」
「おい母さん、熱燗おかわりー」
風呂場から自室へと伸びる廊下。
遠方から訪れている宿泊組の親戚たちは、大人だけのお楽しみに勤しんでいるらしい。
襖がわずかに開いたままになっている客間の前を通りすぎると、すでに眠りについている夏っちゃんの姿がみえた。
その、隣。
彼が寝るはずの場所に用意された布団は、勿論もぬけの殻である。
ドッ……クン
心臓が、重くなる感覚。
どくん
どくん
拍動が激しくなっていく。
血液が、異常な速さで全身をめぐる。
『──……台風……号は猛烈な脅威を……ており、……警戒が……十分に注意して──……』
ついに辿りついた自室前。
スライド式の木製ドアを一枚隔てた向こうから、ニュースを読みあげる男性の声が聞こえてくる。
どくんっ
どくんっ
心臓が痛い。
息が、あがる。
やっぱり逃げてしまおうか。
そう、考えた瞬間。
「そんなとこ立ってないで早く入りなよ、……絢香ちゃん」
感情のない、──翔ちゃんの声。