第7章 少年期の終わりは時として (R18:日向翔陽)
「……っぷ、あはははっ」
「そんなに笑わなくても!」
宴会を終えたあと。
近隣から訪れていた親戚の見送りを終えた私は、自室にて彼とおしゃべりに興じていた。
六畳ほどの和室。
壁際には背丈のない和モダンベッドと、物を雑多に収納しているタンスがある。
「ごめんごめん、だって、翔ちゃんってば可笑しいんだもん」
公開プロポーズに焦りまくった彼は、アワアワとするあまりにビール瓶を倒し、寿司桶をひっくり返し、果てには叔父さんのカツラまでフッ飛ばしてしまったのだ。
その惨劇といったらもう。
空飛ぶカツラと白目をむく叔父さんの顔を思い出して、私はまたひとつ「ぷっ」と吹きだした。
「あーほら! また笑う!」
ベッドに腰かける私の対面。
なにも置かれていない壁際であぐらをかく彼、翔ちゃんは、座布団代わりのクッションを抱きしめていた。
首元まで赤くして私を責めるが、その反応が可愛くてつい意地悪をしたくなってしまう。
「翔ちゃん、お顔が真っ赤」
「こっ、これは暑いからだし!」
「ええー? 本当かなあ?」
本当だし!
超暑いし!
そう言ってむくれる翔ちゃんは、東北から遠路はるばるやってきた疲れなのか、目元に薄っすらとクマができているように見えた。