第7章 少年期の終わりは時として (R18:日向翔陽)
今日は祖父の三回忌だった。
本家である私宅に親戚一同が集まって、くだらない世間話と悪口を延々語りあう。法事とは名ばかりの宴会だ。
しかしこれが、本家の娘である私にとっては苦行でしかない。
親戚中に問われるからだ。
あの、忌まわしき婚姻制度について。
「あんれ絢香ちゃんまだ独身かい!」
ほらこれだ。
すぐこれだ。
全員が顔を揃えたかと思えばすぐさま身内の自慢大会がはじまって、次に酔っ払いによる罵倒大会、そうして最後には必ずこれなのだ。
あなたいい歳なのにまだ独身なの大会である。またの名を、お見合いでも何でもして早く落ち着きなさい大会。
いらぬ口出しとはこのことか。
ほっといてよ、と思う。
「ええ、そうですね……なかなか良いと思える方に出会えなくて」
「あんれま! ほいじゃあアレだい、隆史、ウチん息子だけどね、あれの会社にいい年頃のが」
エトセトラ。以下略。
方々から矢のごとく放たれる「お見合紹介」から逃れるようにして、私は耳をおやすみモードにした。
そりゃ結婚はしたい。
したいけど、でも、出来ないのだ。
そんな私の事情など知るはずもなく、親戚連中はついに「木村さんとこの真司くん」を私に紹介しようとしている。
誰だ。真司くんって。