第1章 キミは宇宙の音がする (R18:灰羽リエーフ)
「……離、して」
「いやだ、離さない」
いつの間にか心惹かれていた。
「……お願い」
「絶対に離さない」
知らず知らずのうちにリエーフを目で追うようになっていた。放課後の「絢香さーん!」を心待ちにしていた。
いつだって変わらない笑顔。
どんな日も。
どんな時も。
自分に向けられる愛に満ちたその笑顔が、好きだった。
「好きなんでしょ? 俺のこと」
好き。
そう言えたら、どんなにいいか。
「……好きじゃないよ」
私がみせたのは精一杯の強がり。
だって、こうするしかないのだ。
夏のコンクールで入賞したとき、ウィーンへの留学を決意した。その決意と同時に、恋人は作らないと決めた。作ったって、どうせすぐに別れなければならない。
9,000kmも離れた遠距離恋愛なんて、続くワケがないのだから。