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山田君の苦悩

第2章 バンド、始めますか?


「山田、話があるんだ。」

「な、何だよ急に改まって。
真面目な話?」

「…私が…ここにいる理由なんだ。」

「…取り敢えず、下に行こうよ。
俺の部屋じゃ狭くて落ち着かないだろ?」

「ううん、ここで良い。」

私がそう言うと、山田はギターを片付け、ベットから床に座った。

「私が…山田の家に来たのはね…両親が行方不明になったからなんだ…」

.......

ある日、3月の上旬。
私が朝起きると妙に家の中が静かだった。

「おかーさーん?」

返事がない。
姿も見当たらない。
鞄と靴と通帳すら残っていた。
それから1週間位しても帰ってこないから、孤独感から家を出てきた。

.......

「は?…何だよそれ…何で言わなかったんだよ…」

「警察にも言ったけど、何にも情報はないし…」

「先生には?」

「…言ってない…」

山田は暫く黙って口を開いた。

「明日言おう。そんでちゃんと…」

「…いやだ…」

「どうしてだよ!もしかしたら親御さんが見つかるかもしれないじゃないか!!」

「今山田といる方が私は良いの!!」

「今の楓を養えるわけないだろ!?」

その言葉が私の胸にグサリと突き刺さり、現実を突き付けられた。
普通に考えればそうだ。
居候の分際で何を言っているのか、急に恥ずかしくなった。

「そう…だよね…
分かった。出ていくよ。」

「待てよ。何も出てけなんて…」

最後まで聞かずに私は荷物を持って表へ出た。

「はぁ…嫌われちゃったなぁ…」

歩いた末に小さな公園があった。
運が良ければ翌朝まで眠れるかもしれない。

「楓!!」

「え、山田…」

急に抱き締められ、胸が締め付けられた。

「何で出ていったんだよ。」

「…だって…私がいると…山田のゲームが買えないからキレてるんだろって…」

「はぁ…違うわ。
ゲームが欲しけりゃ今日ギターなんか買ってないし、追い出したきゃ鍵なんて渡してないよ。」

「…ホントに?」

「あぁ。」

安心したとき、私の胸のダムが決壊して、涙が止めどなく溢れた。
その間ずっと山田は私を抱き締めてくれていた。
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