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山田君の苦悩

第2章 バンド、始めますか?


翌週、うちの高校の文化祭は6月中旬にある。
その為、5月下旬の今からもう3週間を切っていた。

「曲出来たのか?楓。」

曲の練習の為に軽音学部の部室にいると、山田がやって来た。
「もちろん!!今練習中だよ!!」
「良かった。案外楽しみだからな。」

「案外って何だよ。」

あれからちゃんと先生に言って今でも山田の家に厄介になっている。

「クラスの方は何やるか決まったの?」

「何でも、メイド喫茶やるらしいけど…」

「うげっ!それって女子が着るの100%じゃん。」

「でも着たいでしょ?」

「そんなわけあるか!!」

少し怒っても、山田はただ笑っているだけだった。

「ほんと、楓といると楽しいわ。」

「な、何よ急に…」

「何て言うか、学校でもずっと喋ってなかったけど、楓が家に来てから俺って何か変われた気がするんだ。」

「山田…」

「あぁ、ごめん。曲の練習してたのに…じゃあまた家でね。」

「あぁ…分かった…」

山田の後ろ姿を遠い廊下から見つめていた。

.......

私がバンドを始めたいと思ったのは、中学校3年生の夏だった。
高校公開で感化されたと言うのもあったが、何よりテレビの向こうにいたギタリストに惹かれたからだと思う。

1人の帰り道。
今日は珍しく練習が難航して遅くなってしまった。

「ただいまー」

「ようやく帰ってきたか。買い食いしてたんじゃないよな?」

「山田…今9時だよ?」

「あぁ、9時だな。
どうかしたか?」

「いつもならゲームしてる時間じゃん。」

「あのな?いくらゲームが好きでも居候の分の晩御飯ぐらい作ってやらなくちゃ、可哀想だろ?」

「山田…あんた何か悪いものでも食べた?」

「な!人の気遣いを無駄にするのか!」

「うそうそ、冗談だよ。
でも、確かに山田は変わったね。」

「飯なら机に置いてあるから、早く食べて早く寝ろ。」

「うーい。」

山田が二階に行ったのを察して、私は夕飯を見つめた。

「ありがとね、山田…大好きだ。」

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