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山田君の苦悩

第6章 摂氏零度の二人の


「秋斗!!!」

目が覚めたところは自室のベットの上だった。

「…夢…か?」

『向こうの世界は12月24日だよ。』

秋斗の言葉を思い出すと、ケータイを急いで取り出した。

12月24日5時32分

大きな液晶にそう写し出されていた。

「後30分!!」

俺は飛び起き、服を着替えた。
体の軽さから、風邪は完全に治っていた。

家を飛び出すと、楓の自転車はやはりなかった。
あのステージで楓が待っている。

........

モノレールに飛び乗ったお陰で何とか開始には間に合った。
既に会場は満員御礼で、前に行くのは至難の技だ。

ハイハットの音が大きく響き、ギターも掻き鳴らされた。

『やろーども!!元気にしてたかー!!』

楓の少し乱暴な言葉が今はとても懐かしいような気がして嬉しかった。

『今日は寒い中わざわざ私達COLORPENのライブに来てくれてありがとう!!』

ドラムとベースが響き、会場のボルテージはどんどん上がっていった。

『今日は言わずと知れてるクリスマスイヴという訳ですが、皆どうしてた?
まぁ、色んな人がいるよね。』
と、会場の誰かが楓に彼氏はどうした等聞いたもので…

『あー、今あいつ風邪でさー
ちょっと一緒にいれるような状況じゃなくてさー』

乾いた笑いに合わせて璋子がギターを鳴らす。

『さて、準備出来たみたいだから、やってくよー!!』

その声がライブの幕開けとなり、大音量で楓の歌声が響いた。

「楓…楽しそうだな…」

息切れもすっかり収まり、壇上の楓をしっかり捉えられる前列に来れた。

"君が、その気持ちを失う前に…"

楓が歌ったその詩は、何時も必ず練習していた
そしてきっと、俺の秋斗への想いを忘れさせたくないが為の詩だと思う。

次第に俺の目からは涙が出るようになった。

『ちゃんと、誰かの心に響く歌を歌いたいんだ。』

前に彼女がそう言っていたのを思い出した。
楓達はそれから1時間位ずっと歌えや騒げやのライブを繰り広げていた。
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