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山田君の苦悩

第6章 摂氏零度の二人の


夜も更け、10時を過ぎた頃。
ようやく楓達の片付けが終わり、帰ろうとするところだった。

「楓、お疲れ。」

「夏生!!あんた、風邪は!?」

「もう治ったよ。心配かけてごめんね。」

「ごめんじゃないわよ!!…ずっと…心配だったんだから…」

さっきの強気な楓と違い、うっすらと涙を浮かべていた。

「泣くなよ、ほら、ハンカチ。」
「何よ…ハンカチなんてもって…」

舞台から冴木達が降りてくるのが見えた。
が、俺達の事を確認するとニヤニヤした顔で迂回していった。

「見てくれてたの?」

「もちろん、超急いで来たんだからな。」

立ち話もなんだからと、帰り支度をして、家に帰ってきた。

「ただいまー。」

「ただいま。」

「あら、おかえり二人とも。
案外早かったのね。」

「ちょっと話すことがあったからさ。」

「え!!桃子さん!!どうして…」

「まぁまぁちょっとおいでって…」

驚いている楓を連れてゲームの部屋の前へと連れていった。

「どうなってんのよ、これ…」

「俺、夢で秋斗に会ったんだ。」

それから秋斗が話した事をすべて楓に話した。

「…そんなの…信じられるわけないじゃん…」

「まぁ入ってみれば分かるよ。」
俺は慣れた手付きでその扉を開けた。
見慣れたテレビやゲームの入っていた棚は無く、そこには一本のゲームカセットと封筒が落ちていた。

「…何これ…今日はあったのに…」

「母さんが帰ってきてたろ?
多分、母さん達も秋斗の事を思い出してると思うんだ。」

内心ドキドキしながらその封筒を開いた。



お兄ちゃんへ

お兄ちゃんのおかげで僕は普通の死人になれたよ。
それと、分かってるかと思うけど、僕のお願いは取り下げたし、皆思い出してくれてると思うんだ。

あと、楓さん。お兄ちゃんみたいな人を好きになってくれてありがとうございます。

バカでアホな発想しかないお兄ちゃんだけど、見捨てないであげてください。
それじゃあ。




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