• テキストサイズ

山田君の苦悩

第6章 摂氏零度の二人の


....2年前....

丁度今ぐらいの寒さが厳しくなってきたクリスマス前だった。
両親へのクリスマスプレゼントを買いに行く約束をしていた。
俺達3年生は受験の特別授業だったから、早く帰っていた。

「ただいま。あれ、母さんいないな…」

珍しいと思いながらも自室に入って筆記具片手に秋斗の帰りを待っていた。
やはり、勉強をしていると眠くもなる。
一眠りしようとベッドに寝転がり、天井を見上げた。

そのまま、何もせずに俺は瞼を閉じた。

........

「あの後、お前はこの世界からいなくなった。何があったんだ!!」

「…あの頃、確か僕は中学2年生だったね…あぁ…ホントは言いたくなかった…でも言うよ…」

しばらく黙り、秋斗は口を開いた。

「あの日、僕は魂はぐれに会ったんだ。」

「魂はぐれ?何だよそれ…」

「死人の世界では良くあることみたいだよ。
心に深い溝があるとき、ここの使い魔が人を狩りに来るらしいんだ。」

その後も話を聞くと、秋斗は心底深い傷を心に負ったらしく、それが偶々使い魔に目をつけられたらしい。

「…でも、使い魔に拐われても現世の人の記憶から消えることは無いんだよな?」

「それに関してはまた別なんだ。
魂はぐれに会った人はその現世での無念と思いを晴らすために一つだけお願いを聞いて貰えるんだ。」

「それで…自分の事を…?」

「うん…もう忘れて欲しかった。」

「何があったんだよ。
話してみりゃいいじゃねぇか。」

「…お兄ちゃんに何が分かるんだ…」

「…何だよ。」

「この前言ってたよね?
僕より楓ちゃんが大事だって。」

しまった。
見られていたなんて心の角にもなかった。

「そんな事言ってたくせに何だよ。今更兄貴の振りかよ!!」

秋斗は大声をあげて叫んだ。
その声は雪原に響き渡っていた。

「…僕はどうすれば良かったんだ…」

聞き覚えのある言葉だった。
そうして、その記憶は俺の頭を駆け抜けていった。
/ 34ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp