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山田君の苦悩

第6章 摂氏零度の二人の


風邪を引いた。
しかもクリスマスの一週間前だ。

楓のライブが楽しみすぎて応援したくて夜な夜な練習していたせいだろう。

おかげでライブには間に合わないだろう。
そんなことを考えていると、部屋の扉を勢いよく開けるギター少女がいた。

「夏生!!大丈夫!?生きてる!?」

「生きてるわ…それより、練習終わったの?ちゃんと練習してライブしなきゃ…」

「ライブなんか気にしなくていいから!!
夏生同様、私にとっても夏生は大切なんだから。」

そう言って楓は俺の看病を始めた。
何かとあったら心配する楓を見ていると、少し心が和らぐと共に、迷惑をかけてるなと思った。
そのうちに俺はうとうとと眠りの世界に包まれていった。

........

「…き……つ…」

声が聞こえた。
声の高さからして楓では無かった。

それより少し低いくらい。
でも聞き慣れた声だった。

「…つき…に…ん…」

鬱陶しいと思っていたが、次第に意識がはっきりしてきて、声の主を理解した。

「秋斗!!」

「わっ!!ビックリしたな…
驚かさないでよ。」

「…秋斗?…お前…ホントに秋斗か!?つか、ここどこだ?」

俺が目が覚めた場所は一面の雪景色が広がる雪の平原だった。

「ようこそ、夏生おにいちゃん、死人の世界へ。」

「死人?俺はまだ死んでないぞ!!」

「…どうしたんだろうね…まぁ死人の世界の見物でもしていきなよ。」

簡単に言いやがって…
とか思いながらも、俺は秋斗と会えたことを心底喜んでいた。

「お兄ちゃん、彼女出来てよかったね。
てっきり若干引きこもりのまま死んでいくのかと思ったけど。」

「…秋斗、一つ聞きたい。」

「ん?答えられることなら答えるよ?」

「…何で俺の…俺達の前から、記憶ごと消えたんだ?」

「…お兄ちゃんにも…いや、お兄ちゃんには忘れて貰いたかったのに…」

秋斗が言うには深い理由があったらしい。
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