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山田君の苦悩

第5章 秋の夜長は君と。


それからの事はあまり覚えてない。
目が覚めると私の事を夏生が抱き締めながら眠っていた。
後処理はちゃんとしてあって、私は裸だったけど、血は拭き取られていた。

「夏生…」

「ん…ぅん…」

寝言をぶつぶつ言いながら私を離そうとしない。

「かえ…で…」

「しっかし…夏生の寝顔なんて初めて見るなぁ…」

頬をつつくと目がゆっくりと開き、焦点が私に合う。

「楓?…」

「おはよ。起こしちゃった?」

「ううん…丁度良かったよ。

むくりと起き上がり、Yシャツを取った。

「ほら、着ておきな?冷えるでしょ?」

「あ、ありがと…」

夏生の香りがする。
何か甘酸っぱい匂いだ。


「あのさ…ありがと…」

「ん?何が?」

「その…血…とか。」

「気にしないで良いよ、あれから楓直ぐに寝ちゃったから、じゃあ俺ご飯作ってくるから、着替えといて?」

「う、うん…」

何だか今日は妙に優しかった。
私は夏生に促され、膝まであるセーターを着て1階まで降りた。

「あら楓ちゃん、おはよう。」

「あ、桃子さん…」

「いやねぇ、お義母さんでいいのよ?」

夏生がキッチンに立って朝食を作っていて、桃子さんと春臣さんが机に座っていた。

「まぁまぁ桃子さん、若者いじめもそこまでにして、話してやらなきゃいけないことがあるんじゃないのか?」

「父さんまで変なこと言い出すのか?」

「さぁさぁ、そこの席について?」

桃子さんが指差したのは二人が座る向かいの席だった。

「さてと、楓ちゃんも座ったことだし、夏生も来たら?」

「目玉焼きが焦げてもいいなら今から行くけど?」

「それは嫌だわ。」

ニコニコしながら言うものだから、私は少し頬が緩んだ。

........

「それじゃ、ご飯も食べ終わったし、大切な話をするわ。」

「何だよ改まって…」

夏生がこっちを見てきたから、私も少し首をかしげた。

「俺達が私企業をやってるのは知ってるよな、夏生。」

「まぁ…」

「俺達確かに会社をやっているが、俺達のやってることは探偵みたいなことでな、しかも国家秘密並みの依頼ばかりのものだ。」

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