第5章 秋の夜長は君と。
「スッキリしたー!!」
「まぁ合計3000円使えば満足するさ。」
俺としては月半ばで一番お金が無い頃合いだからあまり使われるのは気乗りしないのだが、楓が楽しそうにしていたから許容しよう。
「あの…さ、今日、お風呂入ったら…私の部屋で…待っててくれる?」
「楓の?…まぁ良いけど、先ずは晩飯な。」
話が一段落した頃に丁度家に着いた。
が、
「…ん!?この靴!!」
「ん?誰かいるの?」
「なっちゃん、おかえりなさい。」
リビングの奥から冷淡な女性の声が聞こえた。
「おー!!夏生!!元気そうで何よりだ!!お父さんは嬉しいぞ!!」
「え…お父さんて…」
「あぁ…俺の父さんと母さんだ…」
........
山田春臣
以前にも言ったが、楽天的な俺の父さん。
山田桃子
案外頑固で意思を持った人だから、俺じゃ太刀打ちできない。…だが…
「なるほど、電話通り優しくて面倒見が良くて助かりました。」
「なぁ、桃子さんそれなら構わないんじゃないか?」
「私が文句があるのは、楓さんの方じゃなくて、なっちゃんよ。」
「お、俺?」
「そうよ。全く電話なんかで話しちゃって…そこは直接話して楓さんへの想いを露にするに決まってるでしょ!!」
「…はぁ…そんなことか。」
うちの母はこんな母である。
「でも、本当に行方不明なのよね?」
「…はい…話したことは全部本当の事です。」
「…まぁまぁ桃子さん、せっかくの我が家なんだ、ゆっくりしようじゃないか。」
「あぁそうなっちゃん、母さん達3日だけの臨時帰国だから、楓さんとは同じ部屋で寝てね?」
…は?
「い、今何て言ったんですか?」
俺よりも少し早く楓が聞いた。
「だから、私達の部屋を楓さんが使っているのなら、楓さんには悪いけどなっちゃんの部屋で寝てもらうわ。
私達が寝れないからね?」
「…ちょ、ちょっと待ってよ母さん。俺達だって男と女なんだよ?」
「夏生、ここがお前の正念場だぞ。」
父さん、それは取りようによるとまずい意味になっちゃうよ…