第5章 秋の夜長は君と。
夏が終わった。
途端に冷たくなった風が俺達を吹く。
「あ~眠い…」
「全く、今日はどうしたのよ、
いつも起こしに来てくれてるのに…」
「いや…単純に寝不足…」
「大丈夫?」
「あぁ…うん。」
幸い、今日は体育は無いから良く眠れるはずだ。
隣の楓が起こしてこなければ…
「今日はずっと起きてなきゃダメだかんね。」
「はぁ、寝かせてくれよ…」
「ダメに決まってんじゃん。
夜更かしだって自分の責任な訳だし。」
楽しそうに楓は言った。
確かにこればかり論破出来なかった。
........
「…よって、筆者の主張は…」
ダルい。
国語は授業を受けて学ぶことがどうも肌に合わないらしい。
「夏生、起きなよ。
テスト出るよ?」
「えー…起きたくない…」
「こら!!また二人なの!?」
「げ、」
........
「そういや、前も一緒に立たされてたわよね。私達。」
「そうだね…あんときと変わってないんだな。」
「まぁね…しっかし、寒くなったわね…」
軽く笑いながら言っていたが、彼女の足は小刻みに震えていた。
「ほら、上着。
貸してあげるよ。」
「あ…ありがとう…」
黙った楓は顔を赤くしながら手を繋いできた。
「あ~、やっぱり変わったよな。俺達。」
「え?」
「だって、あの頃はこんなに素直じゃなかったし。」
「う、うるさいなぁ…そんなの夏生だってそうじゃん。」
だんだんと暖かくなっていく楓の手に少し安心していた。
「全く…せっかく今日はあげようと思ったのに…」
「ん?何か言った?」
「な、何でもないわよ!!」
........
それから俺は楓を連れて駅近くのゲーセンに行った。
「さぁて、軽音楽部部長の底力ってやつを見せてやりますか!!」
「なんか気合い入ってるな。」
「今日はいろいろあるの!!
ほら、夏生も弾く弾く!!」
と、半ば強制的に100円を投入させられ、ギターを手にとった。