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山田君の苦悩

第4章 Summer Lover


すぅ…と夏生の頬を落ちていく涙が、日に照らされて紅くなる。

「今でも涙が止まらないんだ…
いつも一緒にいたあいつが、急にいなくなるなんて…認められなくて…」

涙を流しながらそう言う夏生の頭を抱き締めた。

「泣いて良いよ。
全部吐き出しちゃえば良いよ。
私全部受け止めるから。」

サラサラで後ろになびく髪が小さく震える。

「ずっと…この孤独な感情を背負わなくちゃいけないのかと思った。
誰にも覚えてもらえてない秋斗の事を…みんなから忘れられたあいつをどうすれば良いのか…いつの間にか…」

「もう良いんだよ…私が一緒に背負ってあげるから。
約束したじゃん。私のお父さんとお母さん一緒に探すって。
私も、秋斗君の事、探してみせるから。」

優しくまた抱き締めると夏生は少しずつ泣き止んだ。

「ごめん…ずっと胸借りてて…」
「大丈夫だよ。そろそろ帰ろうか?」

「その前に、キスしよう。」

「…えっと…今何て言ったの?」

「だから、チューしようって…」
「かわいい感じに言わないで良いから!!はぁ…」

「楓はしたくないの?」

「そ、そんな事…無いけど…」

夕日に染められた夏生の髪がふわりと風になびく。
心配するような顔に、私はどうしても勝てなかった。

「…しょうがないなぁ…」

「ありがと…」

手を急に引かれて唇が重なる。
この瞬間だけはもうこのまま溶けたいと思う。

「…はぁ…長いよバカ。」

「…ごめん。さて、帰ろうか。」
「うん!!」

この時はまだ、私がとても重大な問題に関わっていたとは露知らなかった。

.......

帰りはモノレールに乗った。
流石の私も疲れてしまっていた。

「来年も…来れたら良いな。」

「来れるさ…一緒にいるんだろ?」

「うん!!」

そうだ。
ずっと一緒にいるって決めたんだ。
もう離れない。
そう誓った夏の夕暮れだった。
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