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山田君の苦悩

第4章 Summer Lover


「夏生!!早く早く!!こっち!!」

「はぁ…楓…早いってば…」

私達は約束通りに海水浴に来た。
やっぱり夏の日差しは暑かったけど、夏生と追いかけ合っているうちに暑さなどどっかに飛んでしまっていた。

「ふぅ、走った走った。」

「もう疲れたよ…ちょっと休憩しない?」

「何甘えてんのよ!!
次はあっちの岩辺に行くわよ!!」

「ちょ、楓!!」

着替えて間もないのに何故こんなに走っているのかって?
そりゃ、気合い入れた私の新水着をみて何とも言わないからだ。

「ここら辺は何もないのかな?」

「あるよ、前に母さんと来た所が…あった!」

「うわ、何この意味ありげな洞窟。
何か出そうなんだけど…」

大丈夫だって、と言って今度は夏生に手を引かれていく。
少し歩くと岩に囲まれた所があって、何処からも見えないような所があった。

「わぁ…すっごくきれい…」

「だろ?海に来たら、一回見せたかったんだ。」

「案外やるじゃん。」

「案外って何だよ。」

その場に座ると、パレオがくしゃりとなったが、あんまり気にしなかった。

「…その…水着…綺麗だね…」

「…バカヤロー…照れるんだよ…」

そう言い、手をゆっくりと触れば、夏生はいつでも繋ぎ返してくれる。
絡まる指から夏生の温度が伝わる。

「…今、俺すっごい幸せだ…」

「私も…」

地平線を眺めながら座っていると、夏生が口を開いた。

「俺、弟がいたんだ。」

「え?弟?そんな話、聞いたこと…」

「あぁ…話してないから当たり前だよ。」

弟さんの名前は秋斗といって、2歳下らしい。

「今何処にいるの?」

「…死んだ…と言うより、秋斗の存在が消えていたんだ。」

「そんなこと…ある訳…」

「丁度2年前、俺達が中学生の頃だよ。朝起きると、あいつの存在はなくなってた。
部屋に行っても全部なくなってた。」

「…どうして…そんなこと。」

「さぁ、神様が何かしたとしか考えられなくてさ、部屋に落ちてたのがあのゲーム機なんだ。」

理解出来なかった。
内容は分かる、だけど、そんな事SFの世界での話だろうと思っていた。

「それからずっと俺はあの部屋にいた。秋斗を忘れたくないから…」
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