第3章 君の奏でる狂想曲
普段ソフトボール部が使っているグラウンドに巨大なライブセットが置かれていた。
そこには既に楓達のCOLORPENが楽器準備をしていて、俺は結構後ろにいた。
『えーどうも!!COLORPENでーす。』
楓の声がマイク越しに聞こえ始めた。
俺は何とか人と人の間をすり抜け、楓が見えた。
『今日は、皆楽しかったかい?せっかくの文化祭なんだから、楽しまなきゃだよね…んじゃそろそろ音も合ってきたし、一曲目行きますか!!』
ギターが軽快に鳴り響くと楓の声がメロディになって響いた。
「ほんと、ギター弾いてるときのお前は楽しそうだよ。」
そう呟き、俺は心なしか楓を見つめていた。
.......
やがて曲が終わると冴木が口を開いた。
『えー、ここでCOLORPENリーダー櫛原楓から、伝えたいことがありまーす。』
『はぁ!?ちょ、璋子!!』
『すいませんね皆さん。ちょっと付き合ってくださいね。』
『有美まで!!』
『ごめん、楓。あたしには止められなかったよ。』
会場がざわつき始めたとき、楓が覚悟を決めたように俯いた顔を上げ、こう言い放った。
『山田夏生!!いるか!!』
「…え?俺?」
『いるなら手を挙げろ!!』
「は、はい!!」
楓が俺を発見し、楓は俺をずっと見ている。
「私は!!夏生の事が!!大好きだ!!!!」
マイク無しで余裕で聞こえた。
「俺も!!楓の事!!大好きだ!!!!」
俺が言い返すと、暫く会場が静まり返った。
そして楓が涙を流して言った。
「だったらここまで来い!!」
そう言われ、人混みを掻き分けているうちに、誰かに担がれ、そのまま観客達に流されるようにして、ステージに辿り着いた。
会場が沸くなか、俺はギターを握りながら俯いている楓の手を握った。
「好きだよ。楓。」
「私ガサツだよ?」
「大丈夫、家事なら俺がやる。」
「私、そんなに女の子っぽくないよ?」
そう言った楓の瞳から涙が零れていた。
「んな事無いさ、今日のお化け屋敷だって怖かったんだろ?」
「…夏生…夏生!!」
飛び込むように抱きついてきた楓を俺は支えきれず、その場に倒れた。
次の瞬間、観客はさっきのライブと同じぐらい沸き、楓は泣きっぱなし。
「全く、最後の曲は要らないわね。」