第2章 バンド、始めますか?
文化祭までもう数日となった。
俺も少しだけクラスの手伝いをしていた。
楓は相変わらずバンドの練習で忙しそうだった。
「あ、山田君。」
一日の授業を終え、家に帰ろうと思っていたら、不意に後ろから声をかけられた。
「えっと…楓のバンドの…」
「中ノ原有美よ。」
「あたしは榊美南、いきなりで悪いんだけど、ちょっと着いてきてくれる?」
「はぁ…」
まぁそんなに急いでいた訳でも無かったから、着いていくと中庭にもう一人のCOLORPENのメンバー。冴木璋子がいた。
「何か用かな?」
「ううん、ただちょっと聞きたいことがあるだけよ?」
「聞きたいこと?…まぁ答えられることなら…」
「ならよかった、じゃあ早速本題にはいるけど、山田君にとって楓ってどんな存在?」
「うーん…良く分かんないんだ。」
「そう、でも、嫌いじゃないのよね?」
「もちろんだよ。んな嫌いだったら家にも泊めておかないし。」
そう言った後、3人の顔が急に和らいだ。
「じゃあ、楓の事お願い出来る?」
「どうして俺なんだよ。
俺なんかより、冴木とか、中ノ原の方が仲良いじゃないか。」
「友達とかじゃないんだよ。
璋子と私たちがお願いしたいのは、あのアホを幸せにしてくれって意味なの。
それは、今まで通りの事だったり、もっと違う意味として捉えても良いと思うわ。」
「何にせよ、あたし達は1年間ずっとあいつを見てきたわけだからさ、あいつの事分からないでもないんだ。
だから、楓の事、悲しませないでくれよ?」
最初の話を聞いていた限り、楓がなにかしら絡んでいるのは一目瞭然だ。
俺としては気にしてなかったが、楓は相当気にしてるんだと思う。
そんなことを考えていると、いつの間にか家に着いていた。
「あ、おかえり山田。
今日は遅かったね。」
「あ、うん。ちょっと用事で抜けらんなくてさ。」
「そっか、ともなれば腹も減ってるだろう?」
「まぁ…」
「じゃあ風呂に入ってこい!!
飯は私が作っておくから。」
「…ありがとな。」
この時から、俺は少し気になっていたのかも知れなかった。