第1章 おひるね
「それにしてもおねえさんは大胆だねぇ」
あのあと夕方まで私もうとうとしてしまい、禁酒中に酒を呑んだ王とそれを咎める政務官のドタバタおいかけっこで三人ともほぼ同時に目が覚め、思いのほか長く寝てしまったことに慌てふためき鍛錬に戻ると言い逃げるように去った白龍を見送ったあと。
残ったアラジンから出てきた第一声がこれである。
「っな、なんのこと」
「とぼけないでおくれよう。白龍おにいさんにちゅーしてたじゃないか。おねえさんは白龍おにいさんのことが好きなんだね!」
目をキラキラさせながら言い放つアラジン。
まさか、見られていたなんて…。
しかしウフフと嬉しそうに笑うこの子を見ていると、見られていたことなど全く無問題のように思えてしまう。
実際ほぼ無問題なのだが。
「ばれちゃあ仕方ないか。うん、私白龍のこと好きよ」
でも今はそんなこと伝えているほどの余裕が彼にはないから。
そう言うと、
「白龍おにいさんの余裕?そんなこと気にしないでいいと思うけどなぁ」
そう言われた。
「…どういうこと?」
「ウフフ、どういうことだろうねぇ」
アラジンはうふうふと嬉しそうに体を揺らしながら言う。
「???」
「でも、伝えてみないことにはなにも起こらないし、なにも進まないと思うよ。」
まっすぐな視線で言われ、私の中の迷いが少しずつ晴れていく。
「そうだね…アラジンがそう言うなら。伝えてみる。」
「応援しているよ!」
「ありがとう、アラジン。」
アラジンも彼の事情は一通り知っているわけだし、まぁ伝説のマギさまの言う事なんだから悪いようには転ばないだろうと思う。
今度、この気持ち伝えてみよう。