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【V6短編集】俺だけに見せて【裏有】

第1章 口実。【森田剛】


「ちょっと、取れてねぇから暴れんな」
「自分で……取るからぁっ」

耳、首すじを舐めただけなのに、はぴくぴくと反応する。
息も微かに荒い。

「どした?」
「あっ……やっ、耳やだぁ」
「ん?ここ?やなの?」
「んんっ……」
「やべぇ、可愛い」
「!」

胸に微かな痛み。
目の前のは、怒ったような、困惑したような、怯えたような、とにかくいい印象を持っていない顔で、俺を突き放した。

「?」
「剛……には、こういう相手してくれる人たくさん、いるでしょ……!今更……今更私なんてやめようよ、もー!」

明らかに取り繕った笑顔で、俺にそう言う。
その声は震えていた。
俺は、きっと、こいつを傷つけた。

「わ、わりーわりー。なんか朝からムラムラしてたのかな」
「……」
「あ……いや、そうじゃなくて……」

俺は馬鹿なのだろうか。


素直に気持ちを伝えればいいだけなのに。
俺はこいつに拒否されるのが怖い。

「さ、私は仕事に行くね!」
「っ……」

呼び止める間もなく、扉が閉まる音が響く。



「な、なんか元気ないね?」
「あるよー……元気100倍、アンパンマンだよー」
「そ、そう……」

飲み会の席、同僚に気遣われながらも、なんとか社交辞令飛び交う中、私は楽しさを装って飲んでいた。
すると、急に黄色い声がこだまする。

「んー?」
「あ、社長のご子息だよ」
「えっ!あの人!?」

厳しい社長とは打って変わって、とても優しそうな人だ。爽やかな風貌で、物腰も柔らかい。
まぁ、有り体に言って、女性が放っておかないタイプだ。

「ごめんなさい。遅れてしまって」
「いいんですいいんですー!」
「瀬尾貴之です。よろしくお願いします」

もう女性社員の目はハートだ。
私も素直にかっこいいな、と一瞬ドキっとする。
そんな時、瀬尾と目が合った。

「こんばんは」
「あ、こんばんは。初めまして。 と申します」
「総務課の子、だよね?」
「え?はい」
「……前から気になってたんだ」

そう耳元で囁かれる。
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