第14章 霧の団
声援は止むどころか大きくなる一方だった。
こんなに民衆の支持を、アリババが獲得していたなんて知らなかったから、正直驚いた。
少し頼りなさそうなんて思ったけれど、彼には人を引きつける何かがあるみたいだ。
彼が帰ってきたら、もっと話してみたい。きっと自分も、彼と仲良くなれる気がする。
思えば、いつの間にか不思議なくらい大きな流れの中に身を置いている。
はじめは、単なる盗賊退治だったはずなのに、いつしかバルバッドの国を動かす、王との会談にまで事は発展した。
自ら望んで、その中にいたわけではなかったけれど、アラジンやモルジアナ、シンが、周りを巻き込んでいく様を目の当たりにして、素直にすごいな、と感じていた。
モルジアナは、アリババを捜し当て、連れてきた。
アラジンは、アリババと話し、説得した。
シンは、アリババの考えを変えさせた。
きっと、彼らがいなかったら、霧の団を止め、内紛を話し合いで収めることなんてできなかったと思う。
目の前に突きつけられた状況を恐れず、前に立ち向かっていく彼らの姿は、とても心強かった。
恐さから目を背けて、逃げ出して、影に潜むものに怯えている自分とは違った。
立ち向かう彼らは、困難な状況も一つ、一つ打開していった。
自分は、彼らの力を借りだけで、何もしていない。
自分の問題にすら目を背けて、何もしていないのだから。
アリババはすごい。一度逃げたこの国と、この国の王と、話をしに行ったんだ。
きっと恐かったはずだ。今も、民衆の期待に押しつぶされそうになっているかもしれない。
それでも、彼は目の前の問題から逃げなかった。
アラジンやモルジアナ、シンに後押しされて、彼は前に進んでいった。
―― 私も、いいかげん、決めなきゃいけない
逃げたままじゃ、きっと何も解決しないと思う。
今まで、恐れや苦しみからずっと逃げてきた。
でも、それじゃあ、ダメなのだ。
前に進むためには、問題に立ち向かう勇気が必要なのだと、アラジンたちが教えてくれた。