第14章 霧の団
会談が成功したら、きっとみんなバラバラになる。
モルジアナは故郷へ行くだろうし、アラジンとアリババも旅に出るのかもしれない。
もしかしたら、アリババは、この国に残ってしまうかも知れないけれど。彼らはきっと自分の道を、上手に選択する気がする。
だから、自分も決めたいと思う。
シンが手を伸ばしてくれた、シンドリアへ行くということだけではなく、これから先をどうするか。
この会談が終わったら、考えて、考えて……、自分なりに答えを探してみたい。
そして、アイツらと向き合ってやろう。今度こそ、逃げずに。
広場に響き渡る、民衆の声援に耳を傾けながら、ハイリアは心の中で決心した。
王宮は、太陽の光をうけて輝いて見えた。
アリババや、シンが、あの場所で頑張っているんだ。
きっと上手くいく。会談も、この先のことも。
真っ白な光に希望を抱きながら、ハイリアは王宮をみつめて笑顔を浮かべた。
その時、急激に近づく強大な気配を感じた。
振り返ったハイリアの瞳に映った、強大な気配は、漆黒の闇だった。
白い光を消し去るような黒い太陽は、広場に集まった民衆をかき分けながら、近づいてきた。
ハイリアのすぐ側をすれ違ったそれは、闇のようなルフを抱えた少年だった。
黒く長い三つ編みに、赤い瞳。
その顔は忘れようがなく、まぎれもないアイツだった。
同じように、振り返りみていたアラジンに、アイツは目を止めていたが、すぐにこちらに気づいて視線を移した。
彼の赤い瞳が見開かれ、その瞳の奥に楽しげな光が宿ったのを感じた。
しかし、彼は何も言わずに目を逸らし、そのまま黙って通り過ぎていく。向かう先は、王宮だった。