第14章 霧の団
「違うよ、話をしに行くだけだ」
周囲が戸惑っているのを感じ取ってか、シンは、皆にもわかるように説明を始めた。
民衆の支持をすでに得ているアリババと、一緒に王宮へ出向き、アブマド国王と話をつけにいくつもりなのだと。
「君は、バルバッド先王によく似ている。君は、紛れもなくバルバッドの王子だ。だから君には、重い責任があるんじゃないか? 」
アリババは少し動揺しているようだったが、シンの言葉を聞いて、何か覚悟を決めたらしい。
その瞳には静かに火が灯り始めているようだった。
「どうだい、カシムくん。これで話がまとまれば、スラムの人々の生活は保障されるだろう。それが君たちの望んでいたことなのだろう? 」
シンの言葉に、カシムは何とも言えない表情をしていた。
納得できていない、そんな風にハイリアには見えた。
彼のルフが少し濁っていた。影を帯びたルフの色が、なんだか気がかりだった。
「行っておいでよ、アリババくん。君は勇気ある人じゃないか。ぼくは知っている! 」
まだ迷っている様子のアリババを、アラジンが励ました。
アラジンの後押しを受けてか、アリババはようやく大きく頷くと、シンと共に王宮へ向かう準備を始めた。