第14章 霧の団
周りの混乱する声を聞いていて、わかってきた。
どうやら、シンは心変わりして、スラムのために戦う霧の団に肩入れしたくなったみたいだった。
「なにこれ? どうしてこうなっちゃったの? 」
盗賊団の内紛に、他の国の王が入ってくるなんて、聞いたこともない。
しかも、助成するだなんて、こんな大きなことをやって、あの王様は大丈夫だろうか……。
ジャーファルと、マスルールも同意したのかと、二人の姿を探して、泣き崩れるようにして落ちこんでいるジャーファルの姿が見えて、理解した。
きっと違う、これはシンが独断で決めたのだ。
カシムは、シンを疑っているようだったし、アリババも、シンの言葉に戸惑っている様子だった。
「どういうつもりだよ? 一国の主であるアンタが、他国に介入するなんて、何か理由があるんだろ? 」
「ただ、この国の民を助けたいといっても、信じないか? 」
疑いの眼差しを向けるアリババに、シンは言った。
「そうだな。他にも理由があるとすれば、それは『世界の異変』を止めるためだ」
近年起こる世界の異変である、戦争や貧困、差別の拡大には、シンドリアも困っているのだという。
まずは、バルバッドの内乱を解決したいと思い、今回は協力するつもりなのだと、シンは言った。
「では、さっそく行動しようか、アリババ君」
「行動? 」
「君は僕と今から、バルバッドの王宮にいくのさ」
シンの言葉に、アリババの表情が凍り付いた。
「何が仲間だ! 結局アリババを王宮へ突き出す気か!! 」
黙っていなかったのは、カシムだった。