第14章 霧の団
「私が道をつくる。その間に行って! アラジン、モルジアナ! 」
側にいるモルジアナと、アラジンに、ハイリアは声をかけた。
「道をつくるだぁ? そんな細い体で……」
げらげらとバカにする男の話を聞き終わる前に、ハイリアはその男の腹に、一発殴り込んだ。
男が低いうなり声を上げるのを聞く前に、そのまま軸足を変えて、回り込むように移動しながら、残る二人の腹や背中に手掌で、すばやく打ち込みを入れこんだ。
あっという間に、剣を振るう暇もないまま、男達が次々と倒れ込む。
「恩に着ます」
モルジアナがそう言って、アラジンの手を引いて走り、部屋を飛び出していったのを見送って、ハイリアは、その扉を守るように盗賊達に向かって身構えた。
「なんだこの女! 強ぇーぞ!? 」
「こいつも奴の仲間だってことだろ! ひるむんじゃねぇ! 」
ハイリアの実力を目の当たりにした盗賊達が騒いだ。
シンドバッドの仲間と思われるのは、何だか心外だけれど、今はシンと協定を組んでいるに等しいから、致し方ないか。
ハイリアは思いながら、部屋の状況を把握した。
部屋の中に侵入している残党は六名。
だが、まだ壊された壁からこちら側へ入ってきていない盗賊達もいる。
ここから見えるだけでも数十名はいるようだし、数は未知数だ。長期戦にはしたくない。
「やっちまえ!! 」
刃物を振りかざして、一斉に盗賊共が襲いかかってきた。
一人では無理だとわかってか、大人数で一気に仕留めるつもりなのだろう。
これだけ多いとさすがに疲れそうだと、ハイリアは思いながら、迫ってきた剣の太刀筋を見極めると、拳に力を入れた。