第14章 霧の団
「馬鹿野郎! 徹底的にやらなきゃこっちがやられちまうんだよ!! シンドバッドにな!! 」
シンの名前が出てくるなんて驚いた。でも、いったいどういうことだ。
『霧の団』はアリババじゃなくて、シンを狙ってきたのだろうか。
ここにシンが泊まっていることは、自分たちくらいしか知らないはずだ。いったいどこから、情報が漏れたのだろう。
「カシム……、シンドバッドって、あのシンドバッドか!? 」
目を丸くするアリババをみて、カシムは急かした。
「あとで話す! 今は時間がねぇ、さあ行こうぜ、アリババ!! 」
説明を求めるアリババの腕を、カシムが引いた瞬間、モルジアナが力強く踏み込んだ。
それをみて、アリババが慌ててカシムを思いっきり突き飛ばす。
「危ねぇ! カシム!! 」
カシムが腰を着き、何もいなくなった間を、モルジアナの強烈な蹴り技が通過した。
滑り込んだ地面が音をたててひび割れて、壁に当たった攻撃は穴をあけた。
攻撃がそれたことに苛立ったのか、モルジアナは座り込んでいるカシムを睨み付けている。
「化け物か……あの女!? 」
カシムは青ざめて引きつっていた。
「とにかく逃げろカシム! 」
アリババは、カシムの腕を引くと急いで走り出した。
部屋の外へ飛び出していった二人をみて、追いかけようとしたモルジアナの前に、盗賊団の仲間が三人立ちはだかった。
三人の男たちは、手に剣を持っている。皆、体格の良い男共だ。
せっかくアラジン達が、アリババと再会できたのだ。また、見失って寂しい思いは、させたくはない。