第14章 霧の団
「カシム! 何しに来たんだよ!? こんなに部下ども連れて……」
「何じゃねぇだろ! 俺達はお前がさらわれたっていうから助けにきたんだ! しかも相手がとんでもねぇっていうから、部下ども引き連れてきたんだ!! 」
カシムは、アリババを追ってやってきたらしい。
こんなに部下を連れてこられては、さすがに戦闘となったら分が悪い。どうにか、彼らを引き連れて穏便に帰ってもらえないだろうか。
「あなたが、カシムさんですね。アリババさんを連れに来たんですか? アリババさん、ついていく気ですか? 」
モルジアナの言葉に、アリババは動揺を隠せない様子だった。
答えられないアリババをよそに、カシムはこちらへ睨みをきかせた。
「そうか、てめぇらも奴の仲間だったんだな……? 」
どうやら、穏便に帰ってくれる様子ではない。
モルジアナと、アラジンを見ていたカシムの視線が、ハイリアへと移った。
「お前、昼間の女だよな。まさかあの時、奴に言われて俺らを探りに来ていたのか? 」
カシムの鋭い視線に、ハイリアは動揺した。なんだか完全に勘違いをされている。
『奴』が誰を指すのかはわからなかったが、相手はこちらを完全に敵と見なしているようだった。
空気がぴりぴりしてきたのを感じて、ハイリアも戦闘態勢に入れるように意識を切り替えた。
「何のことだかわからないけど、手を出してくるなら投げ飛ばすわよ! 」
威圧をかけてくるカシムに、ハイリアは睨み返した。
ホテルの別室からも、爆発音があちこちから響き始めていた。
物が破壊される音が、辺りから響いてきて、宿泊客だと思われる叫び声や、逃げ回る足音が騒がしく聞こえる。
ホテル全体が襲われているようだった。
「カシム! どういうつもりだよ!? 『霧の団』がホテルを襲うなんて聞いてねぇぞ!! 」
アリババが血相をかえて叫んだ。