第3章 砂漠のオアシス
ライラやサアサ以外の人達も、みんな温かい人達ばかりだ。
砂漠地帯のオアシスを巡りながら、行商をして回っているこのキャラバンが、バルバッド方面へ向かうと聞いて、乗せて欲しいと頼み込んだのは、半年ほど前のことだ。
急な申し出で、理由もただバルバッドから出る船に乗りたいという、ひどく曖昧なものだったのに、キャラバンの人達は、何も聞かずに受け入れてくれた。
初めはやっぱり、全身真っ白な体をした自分の姿を見て、みんな驚いていたし、突然キャラバンに入り込んだこともあって警戒もされたけれど、今では家族のように接してくれる。
そして、もう一人。キャラバンに入り始めてまもなく仲間に加わった少女は、ハイリアにとって身近な存在だ。
年も近いし、キャラバンに入ってきた時も理由も、そっくりなせいがあるかもしれない。
露店に向かって、ゆっくりと大きな荷を持ちながら歩いてくる、赤毛の可愛らしい少女の姿を見つけて、ハイリアは手を振った。
モルジアナは、それに気づき、軽く会釈してみせた。
彼女はとっても力持ちで、馬車で運搬してきた多量の荷物を一人で持っても、全く苦もなく持ち上げられる。
そのせいもあって、最近の彼女の仕事はもっぱら露店への荷の運搬になっている。
彼女もバルバッドへ向かうのだと、キャラバン長から聞いた。
あまり自分のことを話したがらないし、感情を表に出すのが苦手なようで、表情が乏しいのだけれど、優しく、真面目な彼女が、ハイリアは大好きだった。
「すごいなぁ! お前がうちのキャラバンに入ってくれて、本当によかったよ! 」
露店まで新しい荷を運んできてくれたモルジアナに、ライラが嬉しそうに言った。
ライラも、そしてもちろん、サアサも、モルジアナのことが大好きだ。
「……はい」
お礼を言っているのか、どうなのか、モルジアナは相変わらず表情が乏しくてわかりにくいけれど、なんとなく喜んでいるように見えた。
露店の台に、新しい果物や野菜を並べ始めるモルジアナをみて、ハイリアもそれを隣で手伝った。