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【マギ*】 暁の月桂

第3章 砂漠のオアシス


袋から取り出し、露店の台へと果物を並べていくと、南国の甘いフルーツの香りがだんだんと濃くなっていった。

赤や黄色、緑に、紫、茶色に、白っぽいものまで、いろんな色と形のフルーツがある。

こんなにたくさんあると、一つくらい手にとって丸かじりしたいけれど、それはバザールで売れ残ってしまった時だけの楽しみだ。

全部売れてほしいけれど、少しだけ商品が余ってくれることを甘い香りに期待した。

綺麗に彩られていく露店を嬉しく思いながら、隣で同じ作業をしているモルジアナを目を向けると、彼女の腕に赤い傷があることに気がついた。

袋か何かで擦り切れたのか、血が滲んでいる。

「モルジアナ、それ怪我しちゃったの? 」

モルジアナは、言われてはじめて腕に傷があることに気づいたようだった。

「……きっと、荷を降ろすときに引っかけたのだと思います。大丈夫です」

血が滲んでいるというのに、モルジアナは気にする様子もない。

作業を続けようとするモルジアナをみて、ハイリアは、持ち合わせていた布を取り出して、彼女の腕の傷に巻くと、結びをつくった。

「ダメだよ。ちゃんと手当しとかないと。また擦れて痛い思いをするのは嫌じゃない……」

ハイリアが言うと、モルジアナは「すみません」と謝り、手当てされた腕をしばらくじっと見つめたあと、柔らかな表情を浮かべた。

「ありがとうございます」

ほんの少し口角をあげてそう言ったモルジアナは、露店へ荷出しの作業を終えると、一人キャラバン隊の馬車の方へと戻って行った。

当たり前のことをしただけなのに、なんだかすごく喜んでいるように見えて、ハイリアは不思議に思いながら、ライラが呼ぶ露店の仕事へと戻った。
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