第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
『そんなに上手くいくかえ……? 』
『そればっかりは賭けみたいなもんだ。上手くいくかもしれねぇーし、そうでないかもしれない。
ただ、悪くなることはないだろう。マゴイ操作を覚えて困ることなんてないからな。少なくとも、俺の頭の中では上手くいっているぜ! 』
たった今、思いついた考えだというのに、ムトは自信たっぷりな表情を浮かべている。
『ただし、一度、鍼治療を施したらハイリアのマゴイの流れは変わる。元には二度と戻せない。
それに体質を変えてしばらくは、マゴイの流れが安定しないだろうから、時々、俺が鍼治療を施して微調整をしてやる必要がある』
『……つまりはお主らと共に、ハイリアも村を出て行く必要があるということじゃな』
『そういうことだ。本気でマゴイ操作をハイリアに教えさせたいというのなら、俺は面倒をみてやってもいいと思っているが、短くても一、二年は村へ帰れないだろうな。
あとは婆さんの気持ちしだいだが……、どうする? 俺の一案にのってみるか? 』
ムトの提案に婆さんは黙り込み、眠り込んでいるハイリアの寝顔をしばらく見つめていた。
ぱちぱちと囲炉裏の火が跳ねる音が、夜が更けた静かな部屋に響く。
『……わしはのう、ルフが見えるだけでも苦労してきたわい。幼い頃から好奇な目で見られてのう。だから、この子には同じような苦労を味あわせたくなかったんじゃ。
しかし、運命とは残酷でのう……、思うようにならんこともある。
でも、不思議じゃあ。おまえさんのような者に出会える時が来るとはのう……』
そう言って老婆は、ムトを見据えて微笑んだ。
『わしにはできんかった方法じゃ。この子の未来のためになるのなら、お主に任せてみたい。ハイリアも、おまえさんに懐いているようじゃしのう。お願いできるかえ? 』
『じゃあ決まりだな。ここで会えたのも何かの縁だろう。責任もって預からせてもらうよ。とはいえ、急に明日からハイリアに一緒について来いというのも酷な話だ。
俺たちは隣町の集落まで物資を運ぶよう頼まれていてね。荷を運び終えてからもう一度、この村へ立ち寄るから、それまでに婆さんからちゃんとハイリアに、話しておいてくれないか?
明朝に立って、三日くらいで戻れるはずさ』
『そうかい。ではそれまでに、旅の準備をしておくわい』